女王蜂/十 寂しさの在り処

女王蜂の新しいアルバム、「十」を聞いている。

毎度、彼女らの紡ぐ歌には舌を巻いているのだが、特にすごい。

 

まずはこのPVを見てほしい。

女王蜂 『聖戦(Holy War)』Official MV - YouTube

これが、一曲目なのである。

 

「もう誰のことも信じられない」

心は動かない

そっと閉じていく

 

助けたって救えないな

それでも どうか いつか

 

いつか笑える気がするわ

いつか笑える日が来るさ

いつか笑える日が来るから

そのときにすこし思い出して

――聖戦/女王蜂

 

私は思う。

これを書いているアヴちゃんは、「人生の底」を見ている人間だと。

曲を聞き進めるうちに、予感は確信に変わる。

 

禁断の恋愛ごっこにとても背伸びしてる

ここに辿り着くためにぼくたちは 結んで繋いで

「大人になれる方法だった」なんて思わないでほしかったんだ

溶け残りを飲み干して眠るよ 手は離さないで

 

先生なんて誰でもないよ

先生だったら誰でもいいの?

――先生/女王蜂

 

やっぱり生まれは選べない

それでもこれでよかったと言える日まで

振り向けないから倒さない 早く着いてよ

夜行バス

(中略)

相変わらず強く生きている

もうすぐシャワーの音が止んで

値段の付いているやさしさを生唾絡めて口移す

――十/女王蜂

 

本当はどのような人生を送ったかなんて知らない。

だが、これを書ける人間は、親から性的暴行を受け、若い身空で身体を明け渡し、ソープで貞操を安売りしていた人間なのだと思う。

何故なら、私も似たような状況に覚えがあるからだ。

詳しくは割愛するが。

 

特に十が凄まじい。

間奏部分、「母さん」を呼ぶと同時、Qと雛市の三重奏が始まる。

それぞれ親の性的虐待、売春婦を歌った物語だ。

思い起こされるのだ。過去と今の薄暗い、イカ臭い地獄が。

他人のいない場で聞いていたら泣き崩れていたかもしれない。

寂しい、寂しいと泣いていたかもしれない。

それくらいの力が、説得力がある歌。

 

せめて、心に刻んだ十字に祈らせて。

いつかの私へ、もう泣かなくていいんだよ、と。

 

十/女王蜂

  1. 聖戦
  2. 火炎
  3. 魔笛
  4. 超・催眠術
  5. 先生
  6. Q.5(inst)
  7. Serenade
  8. HALF
  9. Introduction