人生で最大の

プロポーズをした。

私の大好きで大切な人に。

 

「私が経済的に自立して、嫌じゃなければ、ゆくゆくはパートナーになってほしい」

 

私は女だ。相手も女だ。

 

私の住む区にパートナーシップ制度があるのを知ったのはたまたまだった。

母があるとき、何の気なしに嘯いていたのだ。

「この区でも同性婚できるんだってよ」

調べてみたら、パートナーシップ制度は事実婚として認めてもらえるらしい。

……使わない手はなかった。

 

かねてより好きな人がいた。

好き、いや大切、人生の欠けてはならない何か。

いつも遊んでは、愛しさで胸が暖かくなり、手を繋いで心音が速くなったりした。

この人と一緒にこの先もずっといたい。

 

「愛は祈りだ。僕は祈る」

彼女が特に好きな、舞城王太郎の小説の一節。

祈らずにはいられないのだ。彼女の揺らぎやすい心に、少しでも安らぎある未来が来ることを。

そしてあわよくば、私がその手伝いをしたい。

力にならないかもしれない。けれど、泣いている背中に手を重ねるくらいは出来ると思う。

彼女に降りかかる大小の厄災を、少しでも振り払えたらいい。

そのための事実婚だ。

あくまで手段でしかない。

 

パートナーシップ契約には、同棲が不可欠らしい。

まずは自立して、一緒に暮らしてみること。

そこから始めよう。

いいこともいやなこともあるだろう。

構わない、彼女が笑えるなら。

 

好きなものを語るときの、彼女のきらきらした瞳を思い出す。

それはまるで黒曜石のように艶めいて綺麗で、いつも惚れ惚れしてしまう。

 

死ぬまで一緒にいさせてくれ。愛しい人。